このブログはTRPGでの出来事なんぞを、書こうとしてる ブログですよ。
冬吹雪。
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ジェネケイド、其の魂。
2006-12-19-Tue  CATEGORY: SS
今回は、ジェネケイドの過去。
そして、この世界に来た理由、等などを補填するためのSS
だいぶ長くなったけどw
自分の子に危険な目に有って欲しくは無い。
それは、殆んどの親に言える事では無いだろうか。
勿論、俺も其の例の範疇であり、少なくとも、例外では無い。


まだ、春の途中。日差しが、草木を照らし、様々な生命に命を与える。
そんな或る日、俺の子供、セリアは産まれた。

息が苦しい、動悸が激しくなる。そんな事さえも忘れて、俺は我が家へと駆け出していた。
「はぁっ、はあっ、間に合ってくれよ!」

仕事中に、俺に朗報が入って来ていた。
とうとう、我が家に、自分の分身が生まれ落ちようとしているらしいと。
仕事の仲間は、俺の性格を理解してくれているのか…。
今日はもう上がって、嫁さんの傍についててやれ。と言われた。
……其の言葉を聞いた瞬間に脱兎で駆け出したのは悪かったかも知れないが。

普段、帰り道ですら長く感じる帰り道だ。
この時ほど帰り道が長いと感じた事は無い。
後、もう少しだ。後、もう少しで我が家にたどり着く。
扉の前に立ち、扉を開け放とうととした次の瞬間だった。

俺は、天使の産声を聞いた。


そうして時とは、非情な物である。
時は決して止まる事は無く、只、ゆっくりと其の歩みを進めていくだけである。
俺もあの時より少し歳をとり、娘も、もう10を数えるようになっていた。

最初の頃は、お父さん、お父さんと、ただ懐いてくれていたのだが…。
或る時、娘はこう言い出した。
其れは、俺にとっては一番理解したく無くて、同時にずっと昔に、俺が父に
言った言葉と同じ科白だった。
「お父さん、私、お父さんみたいな冒険者になる!!」
「…セリア、其の話を何処で……」
「お母さんが話してくれたの、昔はお父さん、凄い冒険者だったんでしょ?」
凄い冒険者。其の言葉に、俺は笑おうとした。だが、実際はそうじゃなかったらしい。
「え、あ。母さんがなぁ、そうか。昔は凄かったんだぞぅ」
其の言葉に、セリアは怪訝そうに。そして、何故か、悲しそうな顔でこう返してきた。
「お父さん、如何して、そんなに辛そうな顔するの…?」
「え………」
如何やら、顔の筋肉は、自分の考えとは裏腹にきちんと動いてくれていなかったらしい。
「いや、違うんだ。これはな……?」
「もう、良いよ!私は、お父さんが喜んでくれると思ったのに…!」
そう言葉を残して、娘は駆けて行ってしまった。最低だ。
直ぐに追い駆けようとした。だが、駆ける言葉が見つからない。
仮に、嘘偽りの言葉を並べ立てて今を凌いだとしても、それは何時か判ってしまうから。
それに、あれは自分の娘だ。親が子供に正面から向かい合ってやれない事は、
とても悲しい事だと思うから。だから、かもしれない。
かつての相棒を、かつて共に数々の冒険を共にしてきた相棒を。
そして、俺が冒険を止める事のきっかけにも為った、其の刃を取り出したのは。


「もう、10年以上に為るのか…あれから…」
鉄と木の擦れた音がする。10年以上も倉庫に入れっぱなしだったにも関わらず、
まるで其の刀身は錆びてはいない。そして、その隣に有るただのひのきの棒と、布の服。
「……母さん、か。………俺だけだな、あの時から、時が止まっているのは…」


10年前、俺は、俺を含めて3人の冒険者のパーティを結成していた。

魔法士のアルヘイド・ハイマー、手練士のザック・ヴァリス。
そして、神官戦士である、俺、ジェネケイド・アスメント。
俺たち3人は幼馴染で、子供の頃からずっと一緒だった。
そして、運命の日。俺達は、1冊の本と、俺の運命の女性に出会う事になる。

「おい!アルヘイド!ジェネケイド!良い仕事を見つけてきたぜ!」
そう言いながら何時もの冒険者の宿へ駆け込んできたのはザック。
「また依頼人が実は黒幕で、報酬が支払われない。と、いうのは嫌だぞ。俺は」
少々呆れつつも、とりあえず、嫌味を言うのはアルヘイド。
「まぁ、まぁ。今度は大丈夫かもしれないじゃないか。……前回もこんな事言ってた気がするが」
そして、最後に俺が話を丸く収める事が、俺たちの暗黙の了解になっていた。
「で、ザック。今度はどんな仕事だ?まさか、本当にさっき言ってたような話じゃないだろうな」
冗談半分、あとは本当半分で、真面目に聞いてみる。
「聞いて驚けよ…なんと、我らがマドンナ、カレンさんからのご依頼だ!!」
そして、俺とアルヘイドの空気は、まるで吹雪が体を襲った時の様に動きを止めた。
━━━━━━其の直後。
「……さて、依頼板には新しい依頼は来ていなかったか…」
「あー、さっき俺も見たけど、俺たちで出来そうな仕事は無かったぞ?人数的にも、俺たちは他のパーティに比べて少ないからなぁ。」
「だーっ!なんでそうなるんだよっ!!!」
何時もの事だ、こいつの言うマドンナは、何人居るのかわかったもんじゃない。
ある時は、全く見知った事がない貴族のご婦人。
そして、またある時はスラムに住んでいる全く見知った事が無い少女。
そして…いや、止めとこう。何時までも、例を挙げる事が尽きそうに無い。
「…で、今度は何処の娘さんをナンパしたんだよ、ザック……」
「だから、ナンパじゃねぇって!!本当に、依頼されたんだよ!!」
「ザック、お前は身から出た錆。と言う言葉を、頭に叩き込まないと駄目らしいな」
スッ、とアルヘイドが腰に常備したメイジスタッフを手に取り、構えようとする。
「ちょ、ちょっと待てよ!本当なんだって!依頼人もこっちに向かってる!」
「お前なぁ……、仕事を引き受ける時は、緊急の時以外は3人で話を聞くって言う約束だろ……」
本当に、いつも思うことながら、こいつは盗賊には向いていないと思う。
まぁ、性根は真っ直ぐで、どこか憎めない部分が有るのも、認めてはいるが…如何せん、女に弱いのも事実である。
「って、本当に来るのか?一応、聞いておくが…お前、報酬とかの話は聞いて来たのか?」
「………困っている女性がそこに居るならば俺は、こう言うだろう!!其処の可愛いお嬢さん……何かお困りの事が有れば、私にどうぞ
話を聞かせては下さいませんか?…と」
「…やはり、お灸を据えた方が良さそうだな…」
また、アルヘイドがメイジスタッフを構える。如何やら、今度は本気らしい。
「……あー、まぁ。適当にやっててくれ……、物は壊すなよ、余計な出費を払う金なんて、俺たちには無いぞ」
そして、後ろで、殴打音やら、なにやらが聞こえて来た直後。店のドアが控えめに蝶番を鳴らし、
一人の女性が入って来た。まず、目を引いたのは、ロングの黒い髪。後ろから吹いている風が其の黒髪を弄ぶ。
そして、意志の強そうな黒い瞳。服装は、まるで着飾っているようには見えないが、俺には何処か、其の姿が美しい…、そう感じた。
やがて、其の女性はきょろきょろと、周囲を見渡し。やがて、此方を見て、動きが止まった。
おいおい、冗談だろう?と頭を抑えて頭で思考を巡らせていた直後。
「あ、カレンちゃん!こっち、こっちー!…ジェネケイド、お前、何頭押さえてんの?」
如何やら、いつの間にか2人のじゃれあいは終わっていた様だった。
「え、あ、いや、ちょ、ちょっとばかし頭痛がな?」
「……………へぇ、頭痛ねぇ。本当かぁ?」
顔をにやつかせて、此方の様子を伺ってくる。
やかましい。と机の下でザックの脇腹に肘で良い物をくれてやる。うごっ、と嬉しそうな声を上げて、顔を歪ませている。
「あ、あの……」
おずおずと、声を掛けているのにアルヘイドが気を利かせ、椅子を引いた。
「カレンさん、で宜しいかな?このバカ者が何でも貴方から依頼を引き受けたとか。どうぞ、お話を」
結局何だかんだと言いつつも、何時もは結局こうなるのだ。其の事に内心溜息をつきつつも、彼女の話を聞く事にした。
「で、依頼と言うのは、どういった内容なのでしょうか?」
俺はいつも依頼人達に話す時のように丁寧な言葉を選んで、彼女に質問した。しかし……。
「あ、う。え、えっと。そ、その……」
彼女は、顔を下に背けて、此方を見ようとしない。
「? (…顔が怖かったか?いや、其れとも、言葉遣いが可笑しかったとか…)」
そんな疑問を抱えている俺を、横にぐいっと押し、ザックが前へ出る。
「おいおい、ジェネケイド。まずは自己紹介からだろうが、順序が違うぜ?順序が」
「ん あ、あぁ。そうか、そうだな。俺はジェネケイド・アスメント、一応このパーティのまとめ役かな。で、こっちは」
「アルヘイド・ハイマーだ。宜しく」
「で、最後は俺!って、もう知ってるかも知んないけど。ザック・ヴァリスだ、宜しくな!」
「あ、私は……カレン・シュールズです…宜しく御願いします」
そう言って、彼女は頭をぺこり、と下げる。それと、ついでに聞き覚えの有る単語が聞こえた。
「(シュールズ…シュールズ…。えーと、聞き覚えが有ったな…確か…。)」
此方が思い出すより先に、アルヘイドが口を開く。
「ほう、シュールズの薬屋のお嬢様ですか、ジェネケイド。お前も良く子供の頃は世話に為っただろう、ほれ、あの店だよ。ザックも覚えているだろう?」
其れを聞いて、記憶がより鮮明に思い出された気がする。そして、ついに思い出す。
「あぁ!シュールズの禿親父!!」と、同時にザックと俺は声を上げていた。
というか、ザックはもう知っているとばかり思っていたが。
「お前ら……」額に手を当て、やれやれ、と首を振っている。そして、俺の正面では、カレンがくすくすと、指を唇に当て笑っている。
確かに、親父さんの記憶は有る。しかし……。
「あれ?親父さんに娘なんて居たのか?」ふと、怪訝そうにザックが声を上げる。
「俺も覚えが無いな、子供の頃、何度も世話に為ったし、一度くらいなら顔を会わせてても良いと思うんだが」
ふむ、とアルヘイドは思案じみた顔をする。彼にも覚えが無いのだろう。
「あ、あの。私、子供の頃は体が弱くて…あまり、家の自分の部屋から出ていなかったから……やっぱり…」
其の言葉のあと、彼女がぼそっと、言葉を呟いた気がしたが小声で、うまく聞き取れなかった。
「? やっぱり?えーと、最後のほうがうまく聞き取れなかったんだが……」
大事な事なのかもしれない。そう思い聞いてみたのだが……。
「ひゃ、ひゃい!?え、えええと、その気にしなくて良いです!気にしないでくれて結構ですから!」
突然、顔を赤くされて、えらい剣幕で怒られてしまった。
「え、あ。なら良いんだが………す、すまん……」
此方が謝ると、彼女のほうも、はっ、とし。ご、ごめんなさい。と謝って来た。
多少、空気が静かになってしまい、他の2人に助けを求めようと視線を送ろうとすると、アルヘイドは俺とカレンを見比べて溜息をついているし、
ザックはザックで何故か、顔をにやつかせている。俺の顔に何かついてるのか?やっぱり。そうこうしているうちに、カレンから会話を始めてくれた。
「あ、あの。それで依頼のお話なんですけど……」
「え、あ、あぁ。そうだったな。先に進めてくれ」

依頼の内容とは、こういうものだった。
シュールズの親父さんがつい先日、病気により、亡くなった。それに伴い、薬屋も廃業をやむなしと思われたのだが。
親父さん唯一の、娘である、カレンが店を継ぐ事に決意し、一昨日、親父さんの荷物の整理等を兼ねて、屋根裏の整理を
していると、一冊の本が、荷物の置くに押し込められていたらしく、しかも、其の本は、特に鍵を掛けられている形跡も無いにも関わらず
カレンが本を開こうとしても、ページの1枚もめくる事が出来なかったらしい。其の本の事を母に尋ねても判らない、といった返事が帰ってきただけで、
詳細は不明。そうした経緯により、本の事を知りたくなった彼女は、冒険者に依頼をしようと思った矢先、ザックに声を掛けられた、という事らしい。

「でも、可笑しくないか?普通なら、一冒険者じゃなくて、協会へ本を持っていったほうが確実だと思うんだが」
其の言葉に、カレンは少し、口ごもってしまい、代わりにアルヘイドが推論を述べた。
「恐らく、こういうことだろう。もしかすれば、この本は父親の大事な物かもしれない。しかし、この本の事を調べたい。だが、ここで問題が発生する。
もし協会へ、其の本を持って行ったとして、もし其の本が、協会にとって、研究の対象物になる可能性がある。それに、それなりの金も必要になるだろう。
大事な物だった場合は、其れを取られたくはあるまい。そこで、ある出来事が発生する。このバカだ。」
ザックを指で指し、さらに言葉を続ける。
「金の工面等で困って、溜息をついている所をこの女好き、とても手練士とは思えないこのバカがカレンさんに声を掛ける。
御嬢さん、何かお困りでしたら、相談に乗りましょう、とな。で、今に至ると俺は推測する」
「…手練士じゃない手練士って俺のことかよ!?」
「お前の振る舞いから俺(私)はどうやって手練士であると、見分けがつくのか言ってみろ」
俺と、アルヘイドのダブルでツッコミが入った。反論をされると面倒なので、話を元に戻すべくアルヘイドがカレンに話を振る。
「で、こんなところだと思うのだが、どうかな?」
半ば、此方のやり取りに呆れていたのか、驚いていたのか、数瞬反応が遅れて言葉が帰って来た。
「…  え、あ、はい。殆んど其の通りです、す、凄いですね…」
そんな事は無いよ、と。謙遜しつつもまんざらでもなさそうなアルヘイドだったが、やがて、其の顔は真剣味に帯びて来る。
「しかし、何かしらのマジックアイテムか?危険なものだった場合はどうするべきか…カレン殿、今、其の本はどちらに?」
「あ、はい。今ここに持って来ています。えっと、これなんですが………」
そう言いながら、彼女は本を袋から取り出し、丁寧に机の上へ置く。
見た目は只の古ぼけた本。確かに鍵もかかっていそうに無い。しかし……ある一部分が普通ではない。
普通であれば、書籍名などが書かれてある部分の文字が、通常の文字ではなく、何か別の言葉で書かれていた。
「  ━━アルヘイド、これは何の文字だ?」
「……私達、魔法士が使う、記述式の文字だな…。タイトルは、【箱庭の英雄】…」
「箱庭の英雄ねぇ、もしかすっと、この本を開けば、英雄になれるのかもよ?」
「んな、バカみたいな話があるか」「いてっ」ポコッ、とザックの頭を殴る。
しかし、どちらにせよ……。
「普通の本じゃ、無いな」この言葉に、他の2人もあぁ、と頷ずく。

ここが、俺の人生のターニングポイントだったのかも知れない。
もし、俺が、ここで、彼女の依頼を断れば、恐らく、あんな事は起こらなかっただろう。
しかし、あの頃の俺達は、自分達の力を、正しく推し量る事は出来ていなく、
ただ、思っていたことは、彼女の役に立てれば、それで良い。そんな甘い考えを、心のどこか奥に置いていた。

そして、結果として、俺は親友である、ザックを、殺した。
今でも其の時の出来事は鮮明に覚えている。
そして、俺が殺したはずなのに、あいつはこう言っていた。
俺が殺されてやるんだから、お前は、カレンさんを大事にしろよ?それと、この事は忘れろ。悪い夢だ。覚める事のない悪い夢…。
其の言葉を、俺は守れてはいない。結局、俺は、あの出来事を受け止める事ができないまま、剣を捨ててしまったから。
しかし、あいつは、俺に剣を捨てろとは言っていなかった、むしろ、其の剣で人を守って見せろと。
けど、俺にはあいつを殺してしまった現実が怖くて、怖くて、仕方が無かった。だから、剣を手放した。

「………なぁ、ザック、俺は、もう、お前に許されてるのかなぁ 怖いよ、お前にどんな顔をされるのか」
涙が溢れてきた。もう、涙が枯れるほど、あの時泣いた筈なのに。
「けど、お前はもう、とっくに俺を許してくれてるんだよな お前は根に持たない奴だから」
其れを一番良く知っているのは俺だった筈だ。
「……俺は、もう逃げないよ。だから、笑っててくれ、俺は、もう一度、剣を握るよ」
忘れる事は出来ないのかも知れない。けれど、事実を受け止めて、糧にすることが出来る。
「だから……さよなら、ザック…。次に会った時は、笑ってみせるよ……」
グレートソードの隣にある、ひのきの棒と、布の服に語りかける。
其の時、窓が強い風で開き、その瞬間。
「…お前はいつも気づくのが遅いんだよ、バーカ」
「!?  ザック!?」
周りを見ても、周囲には誰も居ない。しかし、確かに、聞こえた気がする。
「  …そうだな、俺は大馬鹿野郎だよ また会おう、我が唯一無二にして、信頼した、友よ」
そう言って、俺は駆け出した。思い出に浸るのは、いつでも出来る事だ。
しかし、今は………。大事なものがある。


「セリア!!!」
ビクッ!と体を震わせ、また駆け出そうとする、娘の腕を捕まえて、俺はこう言った。
「すまん!お父さんが悪かった!!お父さんで出来る事なら何でもするから、許してくれ!!!」
後になって考えた事だが、正直、娘に頭を下げるのは恥ずかしい事かもしれないと思った。
しかし、許してもらえるのなら、俺の頭くらい、下げてやる。
だが、俺が考えていた事とは見当違いの言葉が帰ってきた。
「  ごめんなさい、お父さん、ごめんなさい…… 」
どうして、お前が謝るんだ。俺が、悪いはずなのに。
「 喜んで くれると思ったの。 お父さん たまに 私を見て凄く悲しそうな顔するから だから だから 心配で…」
………情け無い、自分の胸のうちに閉まっておいたはずの物を、セリアは見抜いていた。……母さんの血筋かな。
泣きじゃくる我が愛しき子を、抱きしめてやる。
「ごめんな、心配掛ける、悪い父親で、ごめんな……もう、大丈夫だから、だから、家に帰ろう、母さんも心配してるよ」
「うん…あのね、もう、冒険者になるなんて言わないよ?だから、もう大丈夫だよ?」
内心、苦笑する。俺の娘にしては、出来が良すぎる、と。親バカかもしれないな……。
手を差し出して、セリアと手をつなぎ、帰路へ着こうとする。
「えー?そうなのかぁ?父さん、セリアに剣術でも教えてやろうと思ったのになぁ…」
「えっ!本当!?嘘じゃないよね!約束、約束だよ!?」
「なんだ、やっぱり、冒険者になりたいのか、はっはっはっ。うん、約束な」

今の俺は、こうして笑う事ができる。だから、今有る、大切なものを守っていこう。
かつての友の約束を乗せて。そして、さらに時は流れる。

あれから5年。
今、目の前でセリアが旅立ちの時を迎えようとしている。
「もう、行くのか?」  「…お父さんっ!?」
…気づかないとでも思っていたのだろうか、驚いているようだ。
「うむ、お父さんだ。親に内緒で出かけるとは、勘弁ならん娘だ」
この言葉に多少、動じたのか。
「・・・・・・うん。・・・ごめんなさい、でも私は・・・。」
「━そうか、元気で暮らせよ?ここは、お前の家だから、いつでも帰って来い」
悲しくない、訳ではない。しかし、親として、子の巣立ちを見守るのは、当然の義務だ。
「…うんっ!」 
「うむ、良い笑顔だ、ちなみにお前の部屋にこれが置いてあったが…」
かつての友との約束の品でもあり、形見である品を取り出す。
「一応、持って行け。俺の武具も貸しておいてやる」
ひょい、とセリアへ向かって投げる。
「・・・うわっ。・・・ありがとう。」
「うむ、じゃあ。いってこい」
照れ隠しに、後ろを向いて、顔を見せないようにする。
「じゃあ・・・行くね?おかあさんにも、行って来ますって、言っておいて。」
絶対に、帰って来いよ。そう、言葉にしたかった。しかし。
「あぁ、分かってるさ。」
「・・・うん・・・行って来ます、お父さん(背を向け、ゆっくり歩き出す。」

そうして、暫く見送っていると。ふと、後ろから声がかかった。
「セリアは、もう、行きましたか?あなた」
「あぁ、行ったよ、何か、言ってやらなくて良かったのか?」
そう言うと、いつかのように、くすっと笑って。
「大丈夫です、あなたと、私の子供ですから……」
「違いない、さて、もう一眠りするか…って、ありゃ?」
家の中の、机の上に、ありもしないはずの物が置いてある。
「あのバカ…財布忘れてるじゃねぇか!!・・・・母さん、今日は豪華に行こうか!」
「……追いかけたいんでしょう?……いってらっしゃい。あなた」
正直、母さんには、敵わない。何時もの事だが。
「じゃあ、ちょっと、追いかけてくるよ、すぐ戻るから」
「はい、いってらっしゃい」

そうして、セリアを追いかけた俺が見たものは、かつて、俺が、友を殺すきっかけとなった、【箱庭の英雄】。あれとよく似た本に俺の最愛の娘の、名前が書き記されていた━━━━━━。
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